No.133/人生の最終段階における医療行為とインフォームド・コンセント(ガイドラインの重要性)(その3)
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No.133/2023.6.1発行
弁護士 福﨑博孝
人生の最終段階における医療行為とインフォームド・コンセント(ガイドラインの重要性)(その3)
(第2 人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン)
第2 人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン(厚労省:平成30年度版)
(はじめに)
人生の最終段階における治療の開始・不開始及び中止等の医療のあり方の問題は、従来から医療の臨床現場において重要な課題となってきました。そこで厚労省は、患者・医療従事者ともに広くコンセンサスが得られる基本的な点についての確認をし、平成19年に初めてのガイドラインを策定しました。その後、平成27年には、「終末期医療」から「人生の最終段階における医療」へと名称を変更し、平成30年3月には、近年の高齢多死社会の進行に伴う在宅や施設における療養や看取りの需要の増加を背景に、地域包括ケアシステムの構築が進められていることを踏まえ、ACP(アドバンス・ケア・プラニング)の概念を盛り込み、次の観点からの文言変更や解釈の追加を行いました(「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン 以下「人生の最終段階ガイドライン」)。
1)患者本人の意思は変化しうるものであり、医療・ケアの方針についての話し合いは繰り返すことが重要であることを強調すること。
2)患者本人が自らの意思を伝えられない状態になる可能性があることから、その場合に本人の意思を推定しうる者となる家族等の信頼できる者を含めて、事前に繰り返し話し合っておくことが重要であること。
3)病院だけでなく介護施設・在宅の現場も想定したガイドラインとなるよう、配慮すること。
いずれにしても、人生の最終段階ガイドラインでは、それまでのインフォームド・コンセントの概念をさらに進化させ、患者本人・家族等の意見を繰り返し聞きながら、患者本人の尊厳を追求し、「自分らしく最期まで生き、より良い最期を迎えるために人生の最終段階における医療・ケアを進めていくことが重要である」としているのです(以上、「人生最終段階ガイドライン」1頁の【平成19年版ガイドライン作成の経緯】【平成30年版ガイドラインの改訂の経緯】参照)。 終末期ないしそれに近似する人生の最終段階における医療の決定プロセスを考えるときには、ここで説明する「人生の最終段階ガイドライン(平成30年版)」は極めて重要なものとなっています。同ガイドラインは亜急性期の患者に妥当するがごとき説明を聞くことも多いのですが、実際には、急性期型でも慢性期型であっても、終末期又はそれに近似する人生の最終段階においては、これ(人生の最終段階ガイドライン)が妥当し適用されることになります。また、各学会がその専門的な立場で策定した「3学会からの提言」、「宗教的輸血拒否ガイドライン」、「透析の開始と継続に関する提言」、「高齢者ケアのガイドライン」等の様々の重要なガイドラインも、この厚労省の「人生の最終段階ガイドライン」を前提としているのです。
ここでは、その「人生の最終段階ガイドライン」を具体的に説明してみたいと思います。
【基本的な考え方】
人生の最終段階ガイドラインでは、まず最初に、以下のような【基本的な考え方】を提示しています(同ガイドライン2頁)。そして、上記の「高齢者ケアのガイドライン」では、「(人生の最終段階ガイドライン(厚労省)について)2018年(平成30年)には、…人生の最終段階の医療とケアについて、患者にとって最良の選択を行うために繰り返し話し合うプロセスでる共同意思決定(SDМ)と、本人が家族等や医療・ケアチームと事前に繰り返し話し合うプロセスであるアドバンス・ケア・プラニング(ACP)の概念を盛り込んで改訂した。」(日本透析医学会雑誌53巻4号177頁)とされていますが、確かにその通り、そこにはSDМとACPの概念が色濃く反映されています(また、透析の開始と継続に関する提言においては、それがさらに濃厚さを増し、提言全体にSDMとACPの考え方が強く反映されているのです。)。
1)このガイドラインは、人生の最終段階を迎えた患者本人・家族等と医師をはじめとする医療・介護従事者が、最善の医療・ケアをつくり上げるプロセスを示すガイドラインです。
2)そのためには担当の医師ばかりではなく、看護師やソーシャルワーカー、介護支援専門員等の介護従事者などの、医療・ケアチームで患者本人・家族等を支える体制を作ることが必要です。このことはいうまでもありませんが、特に人生の最終段階における医療・ケアにおいて重要なことです。
3)人生の最終段階における医療・ケアにおいては、できる限り早期から肉体的な苦痛等を緩和するためのケアが行われることが重要です。緩和が十分に行われた上で、医療・ケア行為の開始・不開始、医療・ケアの内容の変更、医療・ケア行為の中止等については、最も重要な患者本人の意思を確認する必要があります。確認にあたっては、適切な情報に基づく本人の意思決定(インフォームド・コンセント)が大切です。
4)人生の最終段階における医療・ケアの提供にあたって、医療・ケアチームは、患者本人の意思を尊重するため、患者本人のこれまでの人生観や価値観、どのような生き方を望むかを含め、できる限り把握することが重要です(←※SDМ【注1】)。また、患者本人の意思は変化しうるものであることや、患者本人が自らの意思を伝えられない状態になる可能性があることから、患者本人が家族等の信頼できる者を含めて話し合いが繰り返し行われることが重要です(←※ACP【注2】)。
5)患者本人の意思が明確でない場合には、家族等の役割がいっそう重要になります。特に、患者本人が自らの意思を伝えられない状態になった場合に備えて、特定の家族等を自らの意思を推定する者として前もって定めている場合は(←※AD【注3】)、その者から十分情報を得たうえで、患者本人が何を望むのか、患者本人にとって何が最善かを、医療・ケアチームとの間で話し合う必要があります。
6)患者本人、家族等、医療・ケアチームが合意に至るなら、それはその患者本人にとって最もよい人生の最終段階における医療・ケアだと考えられます。医療・ケアチームは、‟合意”に基づく医療・ケアを実施しつつも、合意の根拠となった事実や状態の変化に応じて、患者本人の意思が変化しうるものであることを踏まえて、柔軟な姿勢で人生の最終段階における医療・ケアを継続すべきです。
7)患者本人、家族等、医療・ケアチームの間で、話し合いを繰り返し行った場合においても、‟合意”に至らない場合には、複数の専門家からなる話合いの場を設置し、その助言により医療・ケアのあり方を見直し、合意形成に努めることが必要です。
8)このプロセスにおいて、話し合った内容は、その都度、文書にまとめておくことが必要です。
【注1】シェアード・ディシジョン・メイキング(SDM)は、「共有意思決定」・「共同意思決定」・「協働意思決定」などと訳されていますが、患者側と医療者側の双方が医学的な意思決定プロセスに貢献することを意味し、医療者が患者に治療法や代替法を説明し、さらに、患者が自分の価値観や意向や希望に最も合った治療法等の選択ができるよう、医療者が積極的に支援するものなのです。患者ひとり一人の生活環境や習慣・好み・思いを医師やその他の医療スタッフが共有し、病気や治療法に関しても十分に理解してもらった上で、その患者が最も納得できる最善の治療法を選択する手法であり、医療者と患者がエビデンス(科学的根拠)を共有して一緒に治療法を決定することになります。また、前述の「高齢者ケアのガイドライン」では、「SDМとは、意思決定支援のひとつの方法であり、複数ある選択肢の中で、患者と医療チームが協働で患者にとって最良の医療ケアの決定を下すために繰り返し話し合うプロセスである。」(185頁)と説明されています。
【注2】アドバンス・ケア・プラニング(ACP)は「患者・家族・医療従事者の話し合いを通じて、患者の価値観を明らかにし、これからの治療・ケアの目標や選考を明確にするプロセス」を意味します。すなわち、患者が、家族等・医療者・介護提供者と一緒に、現在の病気だけでなく、意思決定能力が低下した場合に備えて、終末期を含めた医療や介護のことを話し合うことや、意思決定ができなくなったときに備えて、本人に代わって意思決定をする人(家族等)を決めておくプロセス」を意味するのであり、「人生会議」とも呼ばれています。
【注3】アドバンス・ディレクティブ(AD)とは、判断能力・意思決定能力を失った際に自らに行われる治療やケアに関する意向を‟判断能力があるうちに意思表示すること”をいいます。「事前指示」と訳され、これを書面にしたものが「事前指示書」と呼ばれています。また、「高齢者ケアのガイドライン」では、「ADとは、将来意思決定ができなくなった状態に備えて前もって希望する医療やケアの内容に関しての意思を記載した書面であり、自律としての意思決定を尊重してもらう目的で作成する。」(186頁)と説明されています。
1.人生の最終段階における医療・ケアの在り方
① 医師等の医療従事者から適切な情報の提供と説明がなされ(【注4】)、それに基づいて医療・ケアを受ける患者本人が多専門職種の医療・介護従事者から構成される医療・ケアチームと十分な話合いを行い、患者本人よる意思決定を基本としたうえで、人生の最終段階における医療・ケアを進めることが最も重要な原則である。
また、患者本人の意思は変化しうるものであることを踏まえ、患者本人が自らの意思をその都度示し、伝えられるような支援が医療・ケアチームにより行われ、患者本人との話し合いが繰り返し行われることが重要である(←※ACP【注2】【注5】)。 さらに、患者本人が自らの意思を伝えられない状態になる可能性があることから、家族等の信頼できる者も含めて、患者本人との話し合いが繰り返し行われることが重要である(←※ACP【注2】【注5】)。この話し合いに先立ち、患者本人は特定の家族等を自らの意思を推定する者として前もって定めておくことも重要である(←※AD【注3】)。
【注4】「人生の最終段階ガイドライン」(解説編)では、「よりよい人生の最終段階における医療・ケアは、第一に十分な情報と説明(患者本人の心身の状態や社会的背景に鑑み、受ける医療・ケア、今後の心身の状態の変化の見通し、生活上の留意点等)を得たうえでの患者本人の決定こそが重要です。ただし、②で述べるように、人生の最終段階における医療・ケアとしての医学的妥当性・適切性が確保されている必要があることは当然です。」(3頁✳注1)とされています。
【注5】「人生の最終段階ガイドライン」(解説編)では、「医療・ケアチームは、丁寧に、患者本人の意思をくみ取り、関係者と共有する取組みを進めることが重要です。また、患者本人の意思は、時間の経過や心身の状態の変化、医学的評価の変更等に応じて、大きく変化する可能性があることから繰り返し話し合いを行うことが、患者本人の意思の尊重につながります。」(3頁✳注3)とされています。
② 人生の最終段階における医療・ケアについて、医療・ケア行為の開始・不開始、医療・ケア内容の変更、医療・ケア行為の中止等は、医療・ケアチームによって、医学的妥当性と適切性を基に慎重に判断すべきである(【注6】)。
【注6】「人生の最終段階ガイドライン」(解説編)では、「人生の最終段階には、がんの末期のように、予後が数日から長くとも2-3ヶ月と予測が出来る場合、慢性疾患の急性増悪を繰り返し予後不良に陥る場合、脳血管疾患の後遺症や老衰など数ヶ月から数年にかけて死を迎える場合があります。どのような状態が人生の最終段階かは、患者本人の状態を踏まえて、医療・ケアチームの適切かつ妥当な判断によるべき事柄です。また、チームを形成する時間のない緊急時には、生命の尊重を基本として、医師が医学的妥当性と適切性を基に判断するほかありませんが、その後、医療・ケアチームによって改めてそれ以後の適切な医療・ケアの検討がなされることになります。」(3頁✳注4)とされています。
③ 医療・ケアチームにより、可能な限り疼痛やその他の不快な症状を十分に緩和し、患者本人・家族等の精神的・社会的な援助(【注7】)も含めた総合的な医療・ケアを行うことが必要である。
【注7】「人生の最終段階ガイドライン」(解説編)では、「人が人生の最終段階を迎える際には、疼痛緩和ばかりでなく、他の種類の精神的・社会的問題も発生します。可能であれば、医療・ケアチームには、ソーシャルワーカーなど、社会的な側面に配慮する人やケアに関わる介護支援員などが参加することが望まれます。」(4頁✳注7)とされています。
④ 生命を短縮させる意図をもつ積極的安楽死は、本ガイドラインでは対象としない(【注8】)。
【注8】「人生の最終段階ガイドライン」(解説編)では、「疾患に伴う耐え難い苦痛は緩和ケアによって解決すべき課題です。積極的安楽死は、判例その他できわめて限られた条件下で認めうる場合があるとされています。しかし、その前提には耐え難い肉体的苦痛が要件とされており、本ガイドラインでは、肉体的苦痛を緩和するケアの重要性を強調し、医療的な見地からは緩和ケアいっそう充実させることが何よりも必要であるという立場をとっています。そのため、積極的安楽死とは何か、それが適法となる要件は何かという問題を、このガイドラインで明確にすることを目的としていません。」(4頁✳注8)とされています。
2.人生の最終段階における医療・ケアの方針の決定手続
人生の最終段階における医療・ケアの方針決定は次によるものとする。
(1)患者本人の意思の確認ができる場合
① 方針の決定は、患者本人の状態に応じた専門的な医学的検討を経て、医師等の医療従事者から適切な情報の提供と説明がなされることが必要である。
そのうえで、患者本人と医療・ケアチームとの合意形成に向けた十分な話し合いを踏まえた患者本人による意思決定を基本とし(【注9】)、多専門職種から構成される医療・ケアチームとして方針の決定を行う。
② 時間の経過、心身の状態の変化、医学的評価の変更等に応じて患者本人の意思が変化しうるものであることから、医療・ケアチームにより、適切な情報の提供と説明がなされ、患者本人が自らの意思をその都度示し、伝えることができるような支援が行われることが必要である。この際、患者本人が自らの意思を伝えられない状態になる可能性があることから、家族等も含めて話し合いが繰り返し行われることも必要である(←※ACP【注2】【注5】)。
③ このプロセスにおいて話し合った内容は、その都度、文書にまとめておくものとする(【注10】)。
【注9】「人生の最終段階ガイドライン」(解説編)では、「よりよき人生の最終段階における医療・ケアの実現のためには、まず患者本人の意思が確認できる場合には患者本人の意思決定を基本にすべきこと、その際に十分な情報と説明が必要なこと、それが医療・ケアチームによる医学的妥当性・適切性の判断と一致したものであることが望ましく、そのためのプロセスを経ること、また合意が得られない場合でも、患者本人の意思が変化しうることを考えて、さらにそれを繰り返し行うことが重要だと考えられます。」(4頁✳注10)とされています。
【注10】「人生の最終段階ガイドライン」(解説編)では、「話し合った内容については、文書にまとめておき、家族等と医療・ケアチームとの間で共有しておくことが、患者本人にとっての最善の医療・ケアの提供のためには重要である。」(5頁✳注11)とされています。
(2)患者本人の意思の確認ができない場合
患者本人の意思確認ができない場合には、次のような手順により、医療・ケアチームの中で慎重な判断を行う必要がある。
① 家族等(【注11】)が患者本人の意思を推定できる場合には、その推定意思を尊重し、患者本人にとっての最善の方針をとることを基本とする。
② 家族等(【注12】)が患者本人の意思を推定できない場合には、患者本人にとって何が最善であるかについて、患者本人に代わる者として家族等と十分に話し合い、患者本人にとっての最善の方針をとることを基本とする。時間の経過、心身の状態の変化、医学的評価の変応等に応じて、このプロセスを繰り返し行う(←※ACP【注2】【注5】)。
③ 家族等がいない場合及び家族等が判断を医療・ケアチームに委ねる場合には、患者本人にとっての最善の方針をとることを基本とする(【注13】)。
④ このプロセスにおいて話し合った内容は、その都度、文書にまとめておくものとする(【注14】)。
【注11】「人生の最終段階ガイドライン」(解説編)では、「家族等とは、今後、単身世帯が増えることも想定し、患者本人が信頼を寄せ、人生の最終段階の患者本人を支える存在であるという趣旨ですから、法的な意味での親族関係のみを意味せず、より広い範囲の人(親しい友人等)を含みますし、複数人存在することも考えられます(このガイドラインの他の個所で使われている意味も同様です。)」(5頁✳注12)とされています。
【注12】「人生の最終段階ガイドライン」(解説編)では、「患者本人の意思決定が確認できない場合には、家族等の役割がいっそう重要になります。特に、患者本人が自らの意思を伝えられない状態になった場合に備えて、特定の家族等を自らの意思を推定する者として前もって定め、その者を含めてこれまでの人生観や価値観、どのような生き方や医療・ケアを望むのかを含め、日頃から繰り返し話し合っておくことにより(←※ACP【注2】【注5】)(←※SDМ【注1】)、患者本人の意思が推定しやすくなります。その場合にも、患者本人が何を望むのかを基本とし、それがどうしても分からない場合には、患者本人の最善の利益が何であるかについて、家族等と医療・ケアチームが十分に話し合い、合意を形成することが必要です。」(5頁✳注13)とされています。
【注13】「人生の最終段階ガイドライン」(解説編)では、「家族等がいない場合及び家族等が判断せず、決定を医療・ケアチームに委ねる場合には、医療・ケアチームが医療・ケアの妥当性・適切性を判断して、その患者本人にとって最善の医療・ケアを実施する必要があります。なお家族等が判断をゆだねる場合にも、その決定内容を説明し十分に理解してもらうよう努める必要があります。」(5頁✳注14)とされています。
【注14】「人生の最終段階ガイドライン」(解説編)では、「患者本人の意思が確認できない場合についても、患者本人の意思の推定や医療・ケアチームによる方針の決定がどのように行われたかのプロセスを文書にまとめておき、家族等と医療・ケアチームとの間で共有しておくことが、患者本人にとっての最善の医療・ケアの提供のためには重要です。」(5頁✳注15)とされています。
(3)複数の専門家からなる話合いの場の設置(【注15】)
上記(1)及び(2)の場合において、方針の決定に際し、
〇 医療・ケアチームの中で心身の状態等により医療・ケアの内容の決定が困難な場合
〇 患者本人と医療・ケアチームとの話し合いの中で、妥当で適切な医療・ケアの内容について合意が得られない場合
〇 家族の中で意見がまとまらない場合や、医療・ケアチームとの話し合いの中で、妥当で適切な医療・ケアの内容についての合意が得られない場合
等については、複数の専門家からなる話し合いの場を別途設置し(【注15】)、医療・ケアチーム以外の者を加えて、方針等についての検討及び助言を行うことが必要である。
【注15】「人生の最終段階ガイドライン」(解説編)では、「別途設置される話し合いの場は、あくまで、患者本人、家族等、医療・ケアチームの間で、人生の最終段階における医療・ケアのためのプロセスを経ても合意に至らない場合、例外的に必要とされるものです。第三者である専門家からの検討・助言を受けて、あらためて患者本人、家族等、医療・ケアチームにおいて、ケア方法などを改善することを通じて、合意形成に至る努力をすることが必要です。第三者である専門家とは、例えば、医療倫理に精通した専門家や、国が行う「患者本人の意向を尊重した意思決定のための研修会」の修了者が想定されますが、患者本人の心身の状態や社会的背景を通じて、担当の医師や看護師以外の医療・介護従事者によるカンファランス等を活用することも考えられます。」(6頁✳注16)とされています。なお、「別途設置される話し合いの場」については、既設の臨床倫理委員会などを使うことも考えられます(研究倫理委員会しかない場合でも、それに臨床倫理委員会の性格をもたせることは難しいことではありません。)。