No.2/2024年4月までに目指すべき医師の働き方改革について② 【追加的健康確保措置】

No.2/2020.7.15発行

弁護士 福﨑 博孝

 人命を預かるという医療の特性から、やむを得ず一般の労働者に適用される時間外労働の上限(労基法の上限)を超えて医師が働かざるを得ない場合があります(A水準、B水準、C水準)。その場合に当該医師の健康を確保し医療の質や安全を確保するために、一般労働者について求められている健康福祉確保措置(労基施行規則17条1項5号)に加えた措置(追加的健康確保措置)を講ずることとしています。

1.追加的健康確保措置①について

 最低限必要な睡眠(1日6時間程度)を確保し、一日・二日単位で確実に疲労を回復していくべきとの発想に立ち、「連続勤務時間制限」「勤務間インターバル確保」を求めています。また、連続勤務時間制限・勤務間インターバルについて実施できなかった場合には「代償休息」を付与するとしています。

(1)「連続勤務時間制限」については、当直明けの連続勤務を「前日の勤務開始から28時間」と制限しています。

(2)「勤務間インターバル確保」については、24時間の中で、通常の日勤後の次の勤務までに9時間のインターバル(休息)を確保することとされています。

(3)やむを得ない事情により、連続勤務時間制限・勤務間インターバル確保が実施できなかった場合には、代わりに休息を取ること(代償休息)で疲労回復を図ることとされました。

2.追加的健康確保措置②について

同じような長時間労働でも負担や健康状態は個々人によって異なることから、「面接指導」により個人ごとの健康状態をチェックし、医師が必要と認める場合には、当該医師の就業を禁止するなどの「就業上の措置」を講ずることとされています。

(1)「面接指導」は、長時間労働となる医師ひとり一人の健康状態を確認し、必要に応じて就業上の措置を講ずることを目的として行うものであり、時間外労働が「月100時間未満」の水準を超える前に、睡眠及び疲労の状況を客観的に確認し、疲労の蓄積が確認された者については月100時間以上となる前に面接指導を行うこと等を義務付けています。また、(A)水準については、当月の時間外労働実績が80時間超となった場合に、睡眠及び疲労の状況の確認を行い、疲労の蓄積が確認された者について100時間以上となる前に面接指導を実施することとされています。

(2)「就業上の措置」は、いわゆるドクターストップを含むものであり、面接指導した医師が、対象医師の勤務実態や健康状態を踏まえて行うものであり、当直・連続勤務の禁止、当直・連続勤務の制限、就業内容・場所の変更、時間外労働の制限、就業日数の制限、就業時間の制限、変形労働時間制又は裁量労働制の対象からの除外などが考えられています。さらに、年の時間外労働時間の高い上限である1860時間を12か月で平均した時間数(155時間)を超えた際には、時間外労働の制限等、上記の就業上の措置の例と同様に労働時間を短縮するための具体的な取組みを講ずることとなります。