No.1/2024年4月までに目指すべき医師の働き方改革について① 【医師の労働時間】

No.1/2020.7.15 発行

弁護士 福﨑博孝

2019年(平成31年)3月28日、わが国の働き方改革関連法に関する「医師の働き方改革検討会報告書」(以下「働き方報告書」)が公表されました。そこでは、2024年(令和6年)4月までに医師の働き方を変革することを求めています。すなわち、医師の長時間労働については、同年4月までに一定の目途を立てないと、時間外労働が違法となり罰則を科される可能性が出てきました。

1.労働基準法の原則

(1)1週間について40時間、1日について8時間を超えて労働させてはならないと定められています(労基法32条1項・2項)。これが「法定労働時間」であり、これを超えて労働させるためには、職員(過半数の労働者)との間で、いわゆる「三六協定」を締結し、労働基準監督署に届け出なければなりません(同36条)。
(2)そしてその上で、三六協定でも超えることのできない「罰則付の時間外労働の限度」(上限時間)を定めました(医師等、今般の時間外労働上限規制の適用を猶予された業務を除く一般の労働者に適用される規制となります)。すなわち、①週40時間を超えて労働可能となる時間外労働の限度を、原則として月45時間、かつ、年360時間(平均30時間/月)としていますが、②臨時的な特別の事情がある場合には、時間外労働時間を年720時間(平均60時間/月)とし、この場合には2か月~6か月の各平均でいずれも休日労働を含んで80時間以内でなければならず、また、単月では休日労働を含んで100時間未満、さらに特例の適用は年6回を上限としています。以上に違反すると罰則が科されることになります。

2.勤務医の例外(A水準、B水準、C水準)

もっとも、労基法の原則を直ちにそのまま当てはめると、地域によっては医療自体が成り立たなくなる可能性があります。そのために医師の場合には特例的に、以下のような例外的な漸進的対応を行うことにしたのです。

(1)勤務医に2024年4月以降適用される(A)水準

臨時的な必要がある場合の1年あたりの延長することができる時間数の上限を、12か月分として年960時間(平均80時間/月)としています。

(2)地域医療確保暫定特例水準とされる(B)水準

地域での医療提供を確保するための経過措置として暫定的な特例水準(B水準)を設けることとし、臨時的な必要がある場合の1年あたりの延長することができる時間数の上限を、12か月分として年1860時間(平均155時間/月)としています。

(3)集中的技能向上水準とされる(C)水準

初期研修医及び専門医研修に参加する後期研修医に認められる例外的な水準(C-1水準)、医籍登録後の臨床に従事した期間が6年目以降の者であり、先進的な高度技能を有する者を育成するために認められる例外的な水準(C-2水準)があって、いずれもその特例内容はB水準と同じということになります。すなわち、臨時的な必要がある場合の1年あたりの延長することができる時間数の上限を、12か月分として年1860時間(平均155時間/月)としています。